こんにちは。
現役の塾教室長兼講師のトトです。
講師歴は10年になります。
「国語 記述問題の教え方-初心者編」の第7回目となります。
こちらの内容がまだの方は先にお読みください。
こちらでの教え方がご理解いただいている前提でお話ししていきます。 こんにちは。 現役の塾教室長兼講師のトトです。 講師歴は10年になります。 「国語 記述問題の教え方-初心者編」の第3回目となります。 今回は「書き抜き・抜き出し問題の基本」です。 テク ... 続きを見る
書き抜き・抜き出し問題の教え方【国語 記述問題の教え方-初心者編③】
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指示内容書き抜き問題 解き方と教え方【国語 記述問題の教え方-初心者編➃】小学生/中学生
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書き抜き問題 問題パターン別 記述問題教え方一覧
- 指示内容書き抜き問題
- 言い換え書き抜き問題
- 意見書き抜き問題
- 心情書き抜き問題
今回は上記パターン別の4つ目
「4.心情書き抜き問題」です。
目次です
step
1心情書き抜き問題とは
step
2心情を表す言葉を覚える
step
3心情の問題は子供にとっては難問になることも
step
4例題で確認
では一つ一つ見ていきましょう。
1.心情書き抜き問題とは
内容上、文章も用意しました。
前回の「意見書き抜き問題」の例題よりかは読みやすいかと思います(*^^*)
心情書き抜き問題とは、
例題
(俊春が公園でサッカーの練習をしているところに父がやってきた。)
父の蹴ったサッカーボールは大きく弧を描いてゴールに吸い寄せられた。
意外だった。
父は仕事ばかりで家にいるときも常に寝ている。だから自分と同じいわゆる「運動オンチ」だとばかり思っていた。
「…すごい。」
「そうか?」
「簡単にできるんだね。」
「小さい頃に練習したんだよ。たくさん。たくさんね。だから今もできた。昔はもっと下手だったんだよ。」
いつも無表情の父の顔が少し歪んだように見えた。
「僕にもできるかな。」
「続ければ必ずできるよ。今度コツ、教えてやるよ。」
歪んだように見えた父の顔はいつの間にか無表情に戻っていた。その無表情に俊春は初めて誇らしいという感情を抱いた。
<問題>
傍線部「続ければ必ずできるよ。今度コツ、教えてやるよ。」とあるが、父がこう言ったとき、俊春はどのような気持ちになったか、それがわかる語句を文章中から四字で書き抜きなさい。
答え
「誇らしい」
こんな問題ですね。
物語文(小説)に多いですね。
物語文は登場人物に感情移入しやすいので、説明文と比較すると読みやすいです。そのため問題に取り組む生徒も多いです。
ただその割には意外とミスが多いので、注意点を挙げていきます。
今回は同じ心情書き抜きでも、同じ例題ですが少しずつ問題内容を変えてご説明しますね。
では「心情書き抜き問題」を解く為に必要なテクニックと、注意点について解説していきます。
2.心情を表す言葉を覚える
問題パターンとしては
「どのような気持ちですか。」
「どのような感情を持ったと考えられますか。」
「どのように感じとりましたか。」
など、一言に心情問題といっても、問い方は様々あります。
また文章中で使用されている言葉にも様々あります。
まずは「心情系」の言葉をしっかり覚えさせて、
どの言葉で問われても
「あ、類義語はこれだな、どこにあるかなー」
といった具合にいつでも引き出せるようにすることが重要です。
ではよく問題や作品で使用される「心情系の言葉」をまとめてみましょう。
心情を表す言葉
「感情」
「気持ち」
「考え」
「思う」
「誇り」
「(畏敬)の念」
「怒り」
「悲しみ」
「嬉しい」など
まずは人の心を表している言い方を知っておく必要があります。
大人からすると当たり前な事でも、知らないのでは大人の常識は通じません。
「ここにこう書いてあるからそうでしょ!」
なんて言っても、
「あーそうなんだ。(初めて知ったわ…。)」
という感じになります。
特に小学生、中学生の間は「誇り」や「~の念」を日常会話で使用する事はほとんどないでしょう。
なので、意味はわかるけど、心情を表す言葉として意識する事が難しいのです。
このあたりの知識をしっかり入れてから問題に取り組むようにしてあげて下さい。
または間違えるたびに、他の文例を挙げて教える事が大切です。
ココがポイント
心情を表す言葉を使用例を挙げてたくさん覚える!
3.心情の問題は子供にとっては難問になることも
これは書き抜き問題に限った事ではなく、
心情を問う問題全般に言える事ですが、
物語文は感情移入して読む生徒が多いです。
感情移入すればするほど、場面や背景を掴みやすくなります。
ただし、これは物語文を読み進めるには効果的ではありますが、
例えば「悲しい場面」を読んでも、
そもそもそれを「悲しい」と感じる感情を持ち合わせていない。またはそういう経験、体験が少ない場合、
その部分を「悲しい」と捉える事ができません。
これは国語の読解の記事でも紹介したのですが、
本来小説などは読んだ人がそれぞれの価値観で感想を抱くことが醍醐味です。
ですが、国語の問題はある一定の常識的な感情を読ませる問題が多いので、
その一般的な感情に合せて考える必要があるのです。
例題の文章でいうと、「父の顔が少し歪んだように見えた。」という部分では、
「歪んで見えた」という事と、
父のセリフの中の「小さい頃に練習したんだよ。たくさん。たくさんね。だから今もできた。昔はもっと下手だったんだよ。」という箇所から、
昔バカにされたりして、必死に練習したときの苦悩が表情にじみ出ているという背景が読み取れます。
しかし、読む人によっては、これを「イヤな事を思い出させやがって!」と思っている、と捉える人もいるでしょう。
いや、いても良いのです。
読み取り方は自由なので。
しかしこれでは問題に正解する事はできません。
最後の父の「続ければ必ずできるよ。今度コツ、教えてやるよ。」という事から、「続ける事の大切さを教えよう」
としている事が読み取れます。
つまり、歪んだ表情⇒無表情に変化したことで
「幼少期の顏⇒父」に戻り、
子供に教育をしようという父の気持ちも読み取る事ができます。
そういった機微に触れて、俊春は「誇らしい」と感じたと読めます。
ここまで分析して読み進める事はなかなか難しいと思います。
レベルの高い中学受験や高校受験となると、この辺りが読み取れているかを確認する問題も出題されます。
(今回は「初心者用」なので、設問にはしていません。)
だから塾では「心情を読み取る」という事について授業にして指導するわけです。
ある程度の一般的な父の理想像などの表現をたくさんの作品を通して経験する事で、一般的な道徳観のようなものを得ていく事になります。
そうして速く、問題に答えやすい読み方を行えるようになるわけですね。
そういった理由で、国語は「慣れ」だともよく言われます。
でもどういった原因で解けないのかをしっかり把握していないと、
ただやらせるだけではなかなか難しいですよね。
そのためにまずは基本的な問題で心情を読み取る事をしっかり行ったうえで
発展問題を行わないと時間の無駄になってしまいます。
ここまでくると読み方の指導は大変難しくなるので、
塾の先生に任せる方が良いと思いますが、
今回問題にしているレベルまではご家庭でも確認・指導はできるので、
まずはここから始めてみて下さい。
「ちゃんと読みなさい!文章中に書いてあるんだから!解説にも書いてあるでしょう!」
なんて強引な注意・指導は禁句です!
では例題で確認していきましょう!
ココがポイント
心情問題は子供の経験によって難問になり得てしまう、という事を知っておく
4.心情書き抜き問題 例題で確認
さて、では例題で確認していきましょう!
問題は
「~俊春はどのような気持ちになったか、それがわかる語句を文章中から四字で書き抜きなさい。」でしたね。
「気持ち」なので、感情や心情に関する言葉に注目すればいいですね。
文章中に「その無表情に俊春は初めて誇らしいという感情を抱いた。」とあります。
これは間違いなく俊春の感情なので、ここから書き抜けばいい事になります。
さらにこの中から四字で書き抜くので、四字で感情を表す言葉だけを探すと、
「誇らしい」という箇所がちょうど四字になるので、これが正解という事になります。
「~俊春はどういう感情になったか、文章中から九字で書き抜きなさい。」
という問題の場合は、
「誇らしいという感情」が正解になります。
「一文を抜き出してはじめの五字を書き抜け」という問題の場合は、
先程抜き出した「その無表情に俊春は初めて誇らしいという感情を抱いた。」からはじめの五字を取って、
「その無表情」が正解になります。
こういったわかりやすい問題から始めて、発展問題へと繋げていけば良いかと思います。
ただ、前回の「意見書き抜き問題」でも触れましたが、あくまで読解なので、発展問題まで意識するなら、
「どこで誇らしいと感じたんだろう」とか、
直接書かれていない「父の感情」も一緒に考えてみると良いかと思います。
ココがポイント
問題で問われていない人物の心情も考えてみる
まとめ
いかがでしたでしょうか。
国語の添削って難しいんですよね。
でも「これに注目する」や「問題条件を利用する」事で正解はある程度導き出せます。
しかしそれだけにとどまらず、本来の「読解力」を鍛えるという意識も忘れず教えてあげて下さい!
物語文の場合は楽しみながらあれこれお話ししやすいと思うので、問題の正誤も大切ですが、「読み物」としても楽しさも教えてあげて下さいね!
ポイントまとめ
- 心情を表す言葉を使用例を挙げてたくさん覚える!
- 心情問題は子供の経験によって難問になり得てしまう、という事を知っておく
- 問題で問われていない人物の心情も考えてみる