こんにちは。
現役の塾教室長兼講師のトトです。
講師歴は10年になります。
学校の宿題、問題集、過去問、模擬試験などで間違い直しを見てあげる事って結構あるかと思います。
学校の宿題に関しては学校の先生が見てくれるので大丈夫かと思いますが、
個別にしっかり見なければいけない場合や、
受験前の模試や過去問の間違い直しや解き直しは家庭学習として行う事が多いかと思います。
高校生ともなると進学の意識が強いお子様は自主的に取り組むようにもなりますが、
小学生や中学生の場合だと、まだ勉強の仕方をしっかり経験している子が少ないので、親が見てあげる事って多いですよね。
中学受験ともなると、「塾が全て見ますよ!」と言われていても、
ついつい覗いてしまい、注意したくなってしまうのが親ってもんですよね。
(模試の結果なんか、子供がいちばん気にしているのに、声を荒げるのは親ってことが多いと思います…(笑))
そこで今回は避けては通れない「間違い直し」をおこなうときに、
どんなことを見て、注意すればいのか、よくある内容とは異なる視点で実体験を交えてご案内します。
では目次です
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1解法の丸写しだけではダメ
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2大切なのは解法に気づくための「動機付け」
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3解き直しの前に確認を入れる
では一つ一つ見ていきましょう
1.解法の丸写しだけではダメ
さて、お子様が問題集や模試、過去問での間違いを直す際に、
「解説見たの?」とか「解説のここに載ってるじゃない!」
などと言ったことありませんか?
よく見聞きする場面ですよね。
もちろん、解説見ないといけませんよ!
解説を見るな!という話ではありません(笑)。
まずは間違えた問題の解説を見ます。
おそらくは簡単にノートに書くお子様が多いでしょう。
「うんうん、なるほど、そうかここでこの公式を…確かに。」
「あ!ここで計算間違いしてるわぁ、ダメだなぁ。」
とか
「えっと、ここにこの内容が書かれているからこの部分を抜き取って…と、なるほど、そっかぁ。」
という感じで確認するかと思います。
これ自体は何も問題ありません。
しっかり確認させてください。
問題はこの後です。
この確認をした後、解き直しをおこなったり、次の間違いの確認へと進んでいませんか?
ほとんどのお子様がそうだと思います。
ですが、しばらくしてから同じような問題で、
「また計算間違いしている!前も同じミスしたじゃない!」
とか
「また大切な箇所に線を引いていない!何度言えばわかるの!」
など基本的なミスを繰り返していませんか?
そう、実は意外と基本的な事が定着していない事に起因するミスが多いのですよね。
模試や過去問、定期テスト、当然入試問題では「過去と同じ問題」は出ません!
だからこそテストの前にたくさん間違い直し、解き直し、類題演習…を行っているのですよね。
でもやってしまう!
時間をかけただけに
「はぁ~、なんで間違うのぉ?」
とため息しか出ないという経験あるかと思います。
でも子供自身は一生懸命取り組んでいます。
これは大人の方が、「子供の問題への取り組み」を見直す必要があるのではないでしょうか。
ココがポイント
解法の丸写し・理解だけではまたミスする可能性が高い
ではどういう事に注意すればいいのでしょうか。
2.大切なのは解法に気づくための「動機付け」
僕は塾講師を始めた頃、
いわゆる「塾講師の教え方」の通りに指導をしていました。
基本的な事の解説、裏技的な解き方、しっかりとなりについて見てあげる…など、
「保護者が持つ塾講師のイメージ」通りに指導していました。
しかし不思議な事に、手厚い指導を入れているにも関わらず、成績の伸びは限定的でした。
生徒に聞き直しても、「先生の指導はわかりやすいし助かる」と言ってくれます。
生徒の満足はそれで得られていましたし、成績が上がらないというわけではなかったので、
保護者様の満足度も良く、クレームなどは出ませんでした。
しかし、職人気質のせいなのか、ずっともやもやしていたので、一度深く考えてみたのです。
そのときにプライベートで興味をもっていた「行動心理学」というものが、
大学でも必修単元に取り入れられることが多くなっているという新聞記事を目にして気づきました。
そこで「認知」に関する書籍も読み、気づきました。
「人間の行動はイメージやそれまでの認知経験によって左右される」という事です。
そこで、各生徒の性格とこれまでのミスの分析を始めました。
おもしろい結果が得られました。
わかりやすいように算数・数学で例を挙げると、
Aくんの場合
Aくんは模試の結果を見ても様々な単元でミスしているが、
そのほとんどが計算ミスでした。ただしよくある大問1での計算問題でのミスは少なかったのです。
これは「計算問題だ!」と認識する事で計算ミスを防ぐ丁寧な解き方をしているが、
文章題やグラフ、図形問題では注意力が低下している可能性があることを示唆しています。
Bさんの場合
Bさんの場合は、グラフや図形問題でミスが多く、こちらは計算以前の問題でした。
そこで普段のノートとテスト問題でメモしている内容を見比べました。
そうすると、普段のノートではグラフや図形などにわかっている数値を書き込んでいるのに、
テスト問題用紙には書き込んでいなかったのです。
本人に聞いてみると、焦って書くのを忘れると言っていました。
Cさんの場合
Cさんの場合は、問題に図形が書かれている問題の正答率は高いのですが、
文章だけ問題(図形は自分で書く)ではほぼ解けていませんでした。
調べてみると、授業ではしっかり書いているのですが、
テストでは頭の中でイメージしているという事なのです。
よくよく聞いてみると絵を描く事が苦手で、あまり書きたくないとの事でした。
いかがでしょうか、このように書き表すと、それぞれの生徒の課題が見えてきませんか。
Aくんの課題
Aくんの場合は、「計算問題」以外の計算の際に、より丁寧に途中式を書かせることが今やるべき課題です。
Bさんの課題
Bさんの場合は、問題の正誤よりも、図やグラフに値をしっかり書き込むことが課題です。
Cさんの課題
Cさんの場合は、頭の中だけで図をイメージするだけでなく、図をどんどん書くことが課題です。とにかく書き慣れさせることが課題です。
この3人を比べてみると、どれも基本的な事ですよね。
この基本的な事をしっかり行わない限り、その問題の解法が理解できていても正解にはたどり着く事はできません。
正直、個別の問題解法なんてどの解説も丁寧に書いてくれているので、ある程度は誰でもわかります。
「〇〇を求めて、この公式に代入する…」ということを書くのも大切ですが、そもそもそこにたどり着くまでの基本的事項が定着してますかという話しです。
でも基本的な事って「ケアレスミス」で処理しがちなので、ノートには書かず、ほったらかしになりがちなのですよね。
ここをしっかり管理する事が重要だと思います。
ココがポイント
その解法に達するまでに(正解できるまでに)必要な「動機付け」は何かを分析・考えてあげる
3.解き直しの前に確認を入れる
さて分析をし、何を意識させるかその動機付けがわかった後ですが、
この3人には授業や問題演習の前に、
それぞれの課題を、まずは赤ペンでノートに記させてからおこなわせました。
毎度毎度、授業ごとにひたすらこの課題を「言い、記させ、確認」を繰り返しました。
模試の解き直しや過去問でも、おこなうたびに何度も繰り返しました。
生徒からは「わかってるって!」と何度も言われましたがそれでも言い続けました。
そうすると、次の模試では3人とも成績が上がっていました。
それもこれまでミスしていた内容が正解になっていたのです。
特にAくんは計算ミスだけが問題だったので、偏差値が跳ね上がっていましたね。
それからは全生徒、間違い直しの際に、この問題を正解するため(解法にたどり着くため)に
「どう行動させるか」を指導しました。
また、慣れてきた生徒には、間違い直しをする際に「間違わないためにどんな行動をとるべきか」を自分で青ペンでメモさせるようにしました。
(これはある程度指導してからでないと自分ではできないと思うのでいきなりやらせるのはやめてください)
これが自分でできるようになると、家庭学習での効率がぐっと上がり、
塾の授業ではより難しい問題や考え方の指導に時間を割けるようになるので、より効果的でした。
数学で例を挙げましたが、
国語では、
文末表現を合わせる事ができていないならば、注意させるために、
「問題の文末表現の箇所に線を引く」ことをずっとやらせる。
心情を答える内容でいつも間違っているのなら、
物語を読み進める際に「心情に関する記述には全て線を引き誰の心情かメモする」など。
英語では、
動詞の形でよく間違うなら、記述したあと、動詞の形を確認(主語・時制)したときに「レ点」を問題用紙につける。
冠詞の書き忘れがないか確認したら「カン」と書くなど。
理科・社会ではグラフの読み取りでのミスが多い時は、グラフの縦軸、横軸に書かれている単位に○をつけるなど
これらは普段間違い直しをする際に、みんななんとなく気づいていることなんですよね。
ですが、それを覚えておこうとしてもミスしているのが現状だと思います。
なぜならそれ用の行動(トレーニング)をおこなっていないからです。
行動は記憶に残りやすいし、やることが明確なので、意識付けしやすいです。
すこし面倒かもしれませんが、実際これらを行う事にそれぞれ何分もかかるような事ではありませんし、
慣れれば、それこそ書かなくても気を付けられるようになります。
それまでは行動に紐づけして意識させるようすると一気に変わってきます。
ここまで徹底している方はほとんどいないのではないでしょうか。
これをせずにただやり直しをおこなってもその時はできると思います。
だって解法通りにやればいいだけで、必要な値や物事はすでに解法で確認済みで、いちいち書いたりしないと思うのですよね。
これでは解き直しの意味がありません。
解法に気づくための「動機付け」、しっかり行動で定着させましょう!
徹底させる事が大切です!
(塾には「徹底した指導」とよく書いてありますが、「何を徹底しているのかは謎ですよね…)
ココがポイント
動機付けを定着するために、解き直しでは「動機付け」を書かせてから取り組ませる
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまで徹底されている方っていないと思います。
だってなんか面倒くさそうだし、やれるかどうかわからないから。
でもそれでは何も始まりません。
塾任せだけではなくしっかり家庭でも見たい、見る必要がある、という事がわかっているならやるべきです。
やり始めると、「あー、この子今まで表面的にしか見てなかったけど、こんなクセがあるなぁ。」
とか
逆に「あぁ。こんなことはしっかりできるんだ。なるほどね。」
と良い点に気づく事も多々あります。
どうしても時間がない場合は、個別塾に通わせ、こういった指導をするようお願いしてみてください。
(まぁアルバイト講師には難しいですけどね!)
ポイントまとめ
- 解法の丸写し・理解だけではまたミスする可能性が高い
- その解法に達するまでに(正解できるまでに)必要な「動機付け」は何かを分析・考えてあげる
- 動機付けを定着するために、解き直しでは「動機付け」を書かせてから取り組ませる