今回は、小学1年生の「繰り下がりの引き算」についての学習注意ポイントについてお話しします。
私が運営している学習塾でもここが解けなくて悔しい!
と言って小学1年生の女の子が入塾してきたことがありました。
そんなに難しいことないでしょ?
なんとなくで慣でやれるでしょ!?
おっしゃる通りでございますが、
この単元、非常に重要な単元で、
教える側としても学ぶべきところがたくさんある単元です。
読み物としても興味深いと思うので是非最後までお読みいただければと思います。
目次
基本的なひき算の概念について
増やすことはよくあるが、減らすことは相対的に少ない
日常生活において数え上げる事は多いですが、減らす事って少なくないですか?
道を歩けば石ころがたくさん目に入ってきます。一つ目、二つ目…。
鳥を見かける事もあります。1羽、2羽、あ、3羽いるな。
でも減ることを考える事ってありますか?
人は目にするものを数え上げていく習性があります。
本能に忠実な幼児ならなおさらですよね。
従ってもともと減らす事って、特に小さいお子さんの中ではほぼ考えない事なんですよね。
数学上の考え方は「負の数を足す」
とはいえですよ。ご飯を食べれば。目の前の料理が「減っていきます」
お菓子を食べればクッキーの数は「減っていきます」
減ることも目の当たりにはしているんですよね。
でも引き算的な概念ではとらえていません。
数学を思い出してほしいのですが、中学1年生で「正負の数」ってやりましたよね。
あの単元では、「負の数を足す」という概念で学習します。
どういう事?と思いますよね。
例えば「1000円持っていて、300円落としたときの残りの金額は」
というものを式にすると
算数的に書くと「1000-300=700」となります。
ですが数学では「1000+(-300)=700」と書きます。
(もちろん考え方としては結局1000-300で構わないのですよ。)
これどういうことかというと、
「1000円持っているという事実と、300落としたという事実を合わせる」
という考え方なんですよね。
1000円持っている事実は1000円(もしくは+1000円)
300円落とした事実は-300円
この2つを合わせて残り700円という事実が生まれますよね。
だから「1000+(-300)=700」ということになるのです。
これを小学生は「1000-300」としてあたかも引き算という特別な計算の仕方があるかのように行います。
少し難しい話をしましたが、
何が言いたいかというと、引き算の元はたし算なのです。
これって先ほどお話しした「増えていく事が多い」という内容と合っていませんか。
科学では「消滅するという事はあり得ない」という前提で学問が進みますからね。
消えているのでなくて、別の物に変化している、という考え方です。
おそらくは幼児もこのような考え方で減らす事実をとらえていると思われます。
「減るという事実が増えた」という感じ。
難しいことをやっていると理解する事が重要
長い前置きは置いておいて、ここからは本題です。
これまで数え上げしかやってきていないのに、減らすという、普段あまり考えない事を正確に行わないといけないわけです。
そりゃ難しいわけです。
さらに想像してみてください。頭の中でモノが増えていく事って簡単に想像できるのに対して、
減らしていく事ってなんとなく難しく感じませんか?
それは減らしたものがなんなのかを憶えておく必要があるからなのです。
数え上げは今ある数字から順にカウントアップするだけでいいのですが、
減らすことは、減らした数と残った数を同時に考えないといけません。
例えば「9ー7」だと「9、8(1個減らした)、7(2個減らした)、6(3個減らした)…2(7個減らした)」という具合。
頭の中で図をイメージして考えても、消した個数を把握しておかなければいけません。
大人が当たり前にできる引き算って、結構脳内でたくさんの処理にエネルギーを使っているのです。
だから「とても難しいことにチャレンジしている」という事を理解してあげてください。
皆さんも昔はそうだったはずです。ですが忘れているだけなのですよね。
一の位での引き算がスムースにできるか
といことで、繰り下がりを学習する前に、今お伝えした内容である基本の引き算がスムーズにできていないとお話しになりません。
まずはここで躓いている場合は、繰り下がりは一旦置いておいて、先に位置の位同士のひき算をトレーニングしましょう!
なかなかできなくても怒らず根気よく同じ注意点を毎回確認してあげてください!
数の位の概念
十の位と一の位とは
2桁の数になると十の位と一の位の概念が出てきます。
多分小学1年生でしっかり理解できている生徒はほとんどいないんじゃないですかね。
ただこれとても重要です。
実はこの単元の前の「足し算の繰り上がり」で一応出てきているのですが、これを理解できていなくても数え上げ方式で答えがわかっちゃうんですよね。
ただし引き算だとその手は通じません。
後にこの単元の繰り下がりの計算方法は述べますが、とにかくこの十の位と一の位の概念を理解する事が何より重要ですし、この考えを基本として利用する問題は高校生まで出てきます。
また、単位当たりの量という小学生みんな嫌がる単元の基本的な考え方としても重要となります。
「32」という数字について
「32」という数字、みなさんどう読みますか?
ほとんどの人が「さんじゅうに」と読むと思います。
ではこれはどうでしょうか「3 2」
このくらい離すと「3と2」と読むでしょうね。
では「どれくらいくっついていると32で、どれくらい離れていると3と2」なのでしょうか。
こんなもの定義などはありません。
みんななんとなくのルールや雰囲気で呼んでいるはずです。
実はこの「32」という数字、「さんじゅうに」と捉える場合は、
「10×3+1×2」と書くのが正しい書き方です。
つまり「10のかたまりが3個と1のかたまりが2個」という考え方です。
分かりにくい場合は
「10円玉が3枚と1円玉が2枚」といった具合です。
(これは文章題として実際に問題に出てきます)
そして30と2を足すわけですね。
合計32個(32円)ということになります。
だけど、ケタが大きくなると式が長くなっしまいますよね。
という事で0を詰めて「32」としているわけです。
ちょうどひっ算で解くときの上下に足していくのと同じですよね。
かけ算のひっ算も上下に書いていくときに1段ずつ一つ桁を左にずらして書いていく事も理解できるのではないかと思います。
2桁以上の値というのはこのように成り立っているということを、実は小学1年生からなんとなく学んでいるんですよね。
これは中学生の文字式でも再度成り立ちを学ぶ運びになります。
数という概念の中でとても重要な内容になります。
初手としての繰り下がりのルール
さて重要な内容はここまでにしてこれから学校で習う繰り下がりのルールを確認していきます。
※大人が思う繰り下がりとは異なる
今皆さんがイメージしている繰り下がりの際の「十の位から10を借りてきて…」というのは、最終的な繰り下がりのやり方です。
では小学1年生で行う繰り下がりはどのように行うのでしょうか。
①十の位と一の位に分ける
では、「15ー7」を例にしてやってみます。
「15」を「10と5」に分けます。
②十の位から引く数をひき算する
次に10から7を引きます。
「10-7=3」
③残ったものと先に分けた片方の数を合わせる
先に分けた「10と5」の5はもともと何もしていないので、先ほどの3と5を足します。
「3+5=8」
答えは8です。
今文章だけで簡潔に案内しましたが、どうですか、一瞬「?」となりませんでしたか?
わかりやすいように今の内容を式にすると
15ー7
=10+5ー7(①)
=10ー7+5(②)
=3+5(③)
=8
どうですか。
数学的にしっかり式にすると「まぁそうだわな…」となりますよね。
でも小学1年生はこのように式変形の過程で理解するはできません。
習ってませんから。
だから難しいのです。
これを何度も練習し、これを踏まえて、
「25ー7」などで、
十の位から10を借りてくる、
そして15ー7をして…のココです!
ココをなんとなくやっていますよね。
小学1年生で習うのはここの部分なのです。
そして皆さんが覚えている十の位から借りてきて…は繰り下がりの引き算の全体的な解き方なんですね。
この初手の繰り下がりをしっかりやらないと、当然大きな値の繰り下がりもできなくなるのはよくわかるかと思います。
2つの事を同時に考えることの難しさを理解してあげる
以上のように、分けて、引いて、足して…と大人から見れば簡単に見える一つの計算でも、
その過程ではいくつのも計算処理を行っています。
今まで数え上げの足し算ばかりやってきた子供にとっては初めての事ですし、とても難しいことを行っているのです。
まずはとても難しいことに取り組んでいるのだなという事を理解してあげてください。
その上で、今ご案内した計算手順の中でどこで躓いているのかを確認してあげて、
必要な内容をトレーニングしてあげてください!
頭で考えようとするので必要ならば紙やノートに書かせる
最後に小学1年生は、まだノートに式を書くという習性が身についていません。
というか習っていないと思います。
「頭で考えて答えを出し、それを書く」
しかやっていません。
ノートに途中式を書くなんて選択肢自体がないのです。
だから最初どうしても一度にできないなら、
分けた数を書かせてから引き算して、それを書き、
最後に足した答えを書かせて、
一つ一つを「メモる」事を教えてあげてください。
ノートに書き留める癖付けも経験できますしね。
そうしてそれで解けるようになれば、今度は頭の中でやらせてみて…
と徐々にステップアップしてみてください。
焦ってはいけません。
ステップアップ式にすればモチベーションも上がりますし、自己肯定感も上がるでしょう。
最後に
とにかく低学年に何かを教える際は、
「できない」のではなく
「知らないんだ」と認識してあげてください。
一つ一つをじっくりしっかり取り組むという気持ちで、
ゆとりを持ってお子様と楽しんでください!