こんにちは。
現役の塾教室長兼講師のトトです。
講師歴は10年になります。
今回は個別塾の使い方についてお話しさせていただきます。
僕も個別塾を経営している観点から体験談も交えてお話ししていきます。
かなり長い内容になるので、目次の中から気になる事から読んでいただいて構いません。
手っ取り早く選び方だけ読みたい方は、目次の「3」からお読みください!
目次
1.個別塾の大きな特徴と実体
一般的に個別塾といっても、名称は様々です。
主に「個別指導塾」と名がついたものが多いのですが、「個別学習」「自立学習」など様々あります。
共通している大きな謳い文句は「子供一人一人に合わせた指導を行います!」です。
この業界に10年もいれば、うんざりするほど目にしています。
・一人一人の能力に合わせて学習プランを作る。
・1回の授業で1人の講師が受け持つ生徒数はおおむね1~4人程度。
このような塾のタイプを以下「個別塾」とします。
これまで僕の個別塾に入塾した生徒のパターンを簡単に分類すると、以下のようになっています。
個別塾に来る生徒のパターン
・集団塾ではもう到底追いつけないほど学校の学習に遅れてしまっている生徒
・集団塾のひしめき合う環境が苦手な生徒
・自分のやりたいペースで学習する事を望んでいる生徒
・「先生」との距離が近い事を望む生徒
・集団塾での学習の補習として活用する生徒(中学受験でこのケースが多い)
入塾する際の面談も通して思う事は、
「集団塾では希望の学習環境が整わない」と感じている事が前提となっているようです。
どちらかというと、消去法的に個別を選んでいる事が多いと感じます。
これが現状です。
さてそんな個別塾ですが、いざ個別塾を選ぼうとする際に、実は様々なタイプがある事に気づかされると思います。
2.個別塾にもタイプがある
個別塾でも様々なタイプがあります。
それぞれのタイプと特徴はどうなのでしょうか。
運営母体別
まずは経営・運営母体がどのような形態になっているかです。
大手企業
大手企業のメリット
・潤沢な資金と豊富な人材が強み。
・閉校リスクが少なく運営基盤が安定している。
・豊富な人材による情報提供量とスピードは圧倒的。
・その地域を基盤として展開している塾は情報の質が高い。
・組織なので、年間予定などが早めにしっかり立っている。
・講師が合わないと思えば他の講師にチェンジできる。
・ある程度コースなどが決まっていて季節講習会なども含めて選びやすい。
大手企業のデメリット
・教室長が2~3年で移動となる事が多い。
・教室長は進路に関してはプロかもしれないが、指導経験はない事が多い。
・講師はほとんどがアルバイト講師
・一通りの生徒指導手順のマニュアルがあり、授業進行も皆同じで保護者が思っている個別対応はし切れていない場合がある。
受験情報に関して
情報量が多いのはとても有益と捉える方が多いと思います。
注意点は、全国展開している個別塾は、フランチャイズ展開している事が多いので実質は全国規模での情報しか集まりにくいです。
情報の質としてはその地域のみで展開している大手の個別塾の方が、その地域での受験情報に関しては強い事が多いです。
地域内からの受験者しかいないような受験の場合は地域展開のみをしている大手個別塾がお勧めです。
教務に関して
授業自体はほとんどアルバイト講師が行います。社会経験もないので、コーチングや社会的な内容も踏まえて授業展開する事は困難です。
また、人材は豊富ですが、有名国立大学に在学中の講師でも、指導が下手な事は多々あります。自分が勉強することを教える事は別です。
(中には子育てを終えたベテランママさんパート講師が在席している事もあります。)
ただ、勉強とは精神的な部分もあり、性格的な相性でモチベーションが高まるということもあるので、そういった意味ではたくさん在席している大手の個別塾は担当講師の変更もできるので助かりますね。
そして、教室長は生徒の成績管理と保護者対応が主な仕事です。基本的に指導はしません。したがって各生徒毎に個々の問題レベルまで分析する事は不可能に近いです。アルバイト講師との連携がしっかり取れていないと生徒の情報が正確に掴めません。
また大手の個別塾の教室長は離職率が非常に高い事と、事業展開上、教室移動が多いです。3年~5年に一度教室長が変わります。塾の中には複数の塾を掛け持ちするなどのケースもあります。
授業のカリキュラムに関しては、個別とは言いながら、「数学5回」のように回数が固定されたものを提案されることが多いです。個別なら回数(時間)も生徒によって異なるはずなのになぁ、と感じた事を憶えています。
保護者からすると選びやすいですが、本当に子どもにその回数必要?と感じる事もあるかもしれません。
※注意
全国展開しているような大手の塾でも、実態はフランチャイズの場合があります。
その場合はその教室を実際に経営している企業、もしくは個人の指導に関する考え方が本部とは異なる場合があるので注意が必要です。
個人塾
さて個人塾ですが、こちらは個人経営しているという事です。
もしくは企業形態をとっているが、経営している教室数が多くて3教室ほどの小規模企業塾です。
個人塾・小規模企業塾のメリット
・急な面談・振替・補習でも臨機応変に対応してくれる事が多い。
・本当にきめ細かいカリキュラムを作成可能。
・本当の意味でその生徒に会った授業を提供する事ができる。
・無料で受講できるものが多い。
・指導講師が教室長が兼任している事もある。
・費用面で安いことが多い
個人塾・小規模企業塾のデメリット
・経営者の生活費に直結している事があるので、在籍生徒数が減ると閉校しやすい。
・講師をアルバイトで雇っている場合、大手と比べて高学歴のアルバイト講師が集まりにくい。
・進路指導は行うが、情報提供が少なくなりがち。
・教室長の指導レベルがその教室全体のレベルになりがち。
(おまけ)教室長のクセが強い事が多い(笑)
受験情報について
受験情報は集まることは集まります。大手模試会社から情報提供もあるので、しっかりした数値も把握できます。
しかし、それをどれくらい分析、教務に落とし込むかは教室長の力量にかかっています。
さらにそれらを保護者に提供する場合は、情報を整理したり、説明したりと人心と時間を要します。
保護者面談会ではしっかりお伝えするかと思いますが、大手のように待っていても、欲しい情報が入ってこない場合があるので、少しでも疑問に思ったことはすぐに連絡する事をおすすめします。
教務に関して
教務は教室長が講師を兼任している事が多いので、生徒の成績だけではなく、解くときの癖や性格までしっかり把握できている事が多いです。
(どのような生徒を教室長が見ているかはその個人塾により異なりますが。)
この場合は、担当講師の変更は望めません。
アルバイト講師を雇い入れている場合でも大手と比べて人数が少ないので変更の選択肢は制限されてしまいます。
教室長が講師を兼任する、または講師数が少ない場合は、教室長の教務レベルがその教室の教務力だとお考え下さい。
教務面を考える場合は、体験授業で指導の仕方がお子様に合っているのかを中心に見ると良いでしょう。
また、教室長は大手個別塾と違い、同じ教室で長く勤務する事が多いです。
季節講習会に関しては、大手個別塾と同じような形態で提案する事も多いようですが、中には細かく対応してくれる個人塾もあります。
基本的に規定回数しか取れないとしている場合でも、相談すると個別対応してくれることもあるので、その辺りは初回面談で詳しく聞いてみると良いでしょう。
料金に関しては大手個別塾より安くしないと集客に困るという事情もあるので、比較的安価で設定されている事が多いです。
おまけとして、教室長はクセが強い方が多いです(笑)。
少し変わった教育観をお持ちの先生もいるので、初回面談で様々なお話しを通して推し測ってみて下さい(^^;
得意分野別
さて次は得意分野別です。
個別塾は生徒一人一人に合わせた授業を行うというスタイルなので、基本的にはどんな生徒にも対応できるのですが、「こんな生徒を指導する事を得意としています!」という、得意分野を押し出している個別塾が最近では増えてきています。
大きく「補習型」と「進学型(高偏差値用)」の2つに分けられます。
補習型個別
補習型個別は基本的に「学校の授業についていけていない子供」をメインターゲットとしています。ほとんどの個別塾がこれに該当するので、集団塾と個別塾の比較とほぼ同様になりますね。
補習型のメリット
・その子に合ったペースで進められる
・学校の授業を円滑に受けられるようになる。
・現在通っている学校の点数を上げやすい(対策が充実している)
・勉強の姿勢を学べることが多い。
・集団塾の補習としても使える。
補習型のデメリット
・成績が上がってきた場合、ハイレベルな指導は期待できない。
・最難関中学・高校・大学をこの塾一本では対応しきれないことがある。
・授業進行や指導内容が緩くなりがち
補習型個別は、基本的に学校の授業の補習です。
正確には「その子の足りない部分を補い習う」ということなので、積極的にどんどん学習させるというタイプではありません。
ただし、「集団塾や予備校(最難関中学・高校・大学用)の補習」を受け付けている場合もあります。その場合は、講師の力量を見極める必要があります。
さらに補習型にやってくる生徒は比較的学力が低い生徒が多いです。そのため、教室内全体の空気が緩やかな感じになっている事が多いです。
もちろん個別にペースを合わせるのがこのタイプの塾の強みなので、そういった意味でも、成績が上がって、もっと上を目指そう!というときにこの空気感が邪魔してしまう事もあります。
進学型(高偏差値用)
いわゆる最難関私立中学や高偏差値高校・国公立大学などの合格を目指している個別塾です。
最近になってこれらを「専門」と謳っている個別塾が増えてきました。
進学型のメリット
・最難関中学受験や最難関高校受験に対応できる専門講師が多い。
・ハイレベルな個別授業が期待できる。
・受験情報も難関校の個別具体的な情報が多い。
・大手集団塾の上位クラスの補習(併塾)にもすぐに対応できる準備ができている。
・個別一本でも難関受験にも臨める。
進学型のデメリット
・学校準拠の学習ではない事が多い。
・「学校の課題を仕上げる」など学校生活における姿勢などを学習させる事は期待できない。
・料金が高い。
進学型は最近増えてきた個別塾タイプなので、その効果に関してはこれからというところもありますが、これまでの個別塾のイメージである「高偏差値の生徒への対応ができないのでは?」という事を補完する事になります。
とはいえあくまで受験専門塾ですので、大手企業が運営母体となると合格実績にもこだわるので、ここは集団塾同様、高偏差値への生徒対応が優先という図式になりかねません。
したがって、個別塾とはいえ、学校生活の姿勢からしっかり学習させるという事が目的の方や、中学受験を目指しているが現在学力が低い場合は、まずは補習型から入る方が良いかもしれません。
ただ、最初から専門講師が揃っているので、講師が合う合わないは補習塾に比べて探したり見極めたりする手間は省けそうです。
料金が高くなるのは…致し方ないですね…(;^ω^)
受講スタイル別
さてここからは受講スタイル別です。料金の違いと授業内容との兼ね合いも含めて特徴を挙げていきます。
1:1
1対1は講師一人が生徒一人だけを見る受講スタイルです。
横についてしっかり見るという意味ではとても安心感があります。
しかし講師一人の時間給を生徒一人の受講料で賄う形になるので、必然的に受講料は高くなります…。
個人的な意見ですが、生徒が演習する時間は講師が空くので、質問攻めにする場合を除いて1対1は不要かなぁと感じます。
1:2
1対2は講師一人が生徒二人を見る受講スタイルです。
生徒一人が演習している間にもう一人の生徒に解説などを行うイメージです。
ほとんどの個別塾がこのスタイルをメインに取り扱っています。塾経営を考えてもこのスタイルが保護者の安心感も考慮してバランスが取れているのかな、と感じます。
しかし一人の生徒が演習が終わっても他の生徒の解説に時間がかかっている事はあります。
生徒の事を熟知している講師の場合は、事前に授業シュミレーションや準備もしっかり行っているので、そのような事は少なくなってきます。
指導内容もそうですが、授業進行も上手か下手かは、その講師の学歴では簡単に推し測る事はできません。
料金は少し高めといったイメージです。
1:3~5
1対3~5は、講師一人が生徒三人~五人を見る受講スタイルです。
生徒一人にかける時間は当然少なくなります。
ただし料金は集団塾並みに安いこともあります。
僕はこのスタイルで授業を行っています。
このスタイルの場合は生徒の学年や科目もバラバラになる事が多いので、他教科同時指導ができる講師しか対応できません。
何より授業進行の経験とレベルがかなり高くないと円滑な授業展開は難しいです。
したがって長くても指導経験が3年程しかない大学生講師には無理だと思います。
演習だけをたくさんやらせたいだけの場合は大学生講師でも良いかもしれません。
3.選ぶときの注意点
選ぶときの参考としては、今記述した順番で選んでいただければいいかと思います。
選ぶ手順の参考
1保護者として得たいもの
・組織としてしっかりしたものに安心感を求めるなら大手企業塾。
・かゆいところに手が届く対応を期待するなら個人塾or小規模企業塾。
2何を目的に塾に通わせるのか
・学校の勉強について行かせたい、勉強する姿勢から学ばせたい、自分のペースでじっくり勉強と向き合わせたい場合は「補習型」。
・受験志望校合格に向けて個別対応でがっつり勉強させたい場合は「進学型(高偏差値用)」。
3受講スタイルは
・しっかり授業前に質問事項をまとめ、自分で質問できる場合は1対1。
(でもこの場合は正直大手集団塾へ行った方がコスパ良いです。)
・演習も解説も料金もバランス良くを希望する場合は1対2
・料金メインでとにかく勉強する時間を確保したい場合は1対3~5
初回面談・体験授業での注意点
初回面談
より効率よく個別塾を選びたいときのポイントです
準備するモノ
- 直近のテスト結果(答案用紙も)
- ノート
- 聞きたいことをまとめたもの
直近のテストは数値指標だけでなく、
「答案用紙(数値指標・問題要旨・解答用紙が揃っていればベスト!)」
を持参して教室長に見てもらいましょう!(ここで教室長の教務力を推し測ることができます。)
面談時に確認する事
- 教室長の提案・診断内容(どれくらい具体的か)
- 教室長と講師の連携はどれくらいとれているのか
- 人気の講師は誰か
- 保護者との連絡はどれくらい対応してくれるのか
- 受験情報はどのような形で提供してくれるのか
- その他気になる事、お子様の性格に対応できるかどうかなど
特に1番目はポイント
面談の際には必ずお子様の答案用紙を持参し、
「こんな状況なのですが…」と見せてください。
紙だけでわかるの?という方もいるかもしれませんが、
わかります。
何年も授業や成績を見ているとわかります。
字の書き方、空欄の数、空欄の箇所、取り組んでいる問題種類、問題用紙に書き込まれたメモ、それらでおおよそのお子様の性格までわかります。
「数学は□□で躓いているので△△から途中式をしっかり書かせる形で復習するといいでしょう。国語は…」
というように各教科具体的に指摘してもらいましょう。
その上で、
「お子様は○○な性格のようで、▲▲のような学習が合っていると思われます。したがってまずは■■のような流れで授業を進めると効果的かと思いますが、お母様から見てどう思われますか…。」
のように長期スパンでの学習の仕方に関しても指摘があると良いかと思います。
これを「数学が苦手なようですね…。まずは数学をメインに学習しましょう」のように保護者でもわかる事しか言わない教室はやめましょう。
このような文句は大手企業塾のマニュアルの中にあります。
僕が実際に大手個別塾の教室長をしていたとき、一通り見た後そう言えと上司に言われました。
体験授業での注意点
体験授業は保護者が横で見る事ができない事もあるので、お子様にしっかり聞き取りをしましょう。
ただし体験授業は、入塾してほしいという希望が塾側にあるので、いつもより丁寧に授業をすることがほとんどです。
その上でのポイントを挙げます
体験授業でのポイント
・入塾後も担当してくれる講師を体験授業につける
・お子様に質問しやすかったかを聞く
・宿題がしっかり出されているか確認する
体験の担当講師はできるだけ入塾後も引き続き担当してくれる講師をつけてもらいましょう。
体験だけ授業の上手な講師をつけて、いざ授業が始まったら異なる講師…というリスクを避けるためです。
そして、体験が2回以上あるときは必ず「宿題がしっかり出されているか」を確認してください。
体験授業はその授業だけに注目しがちですが、宿題も授業の一部です。
どのような宿題が出されるのか、しっかり確認しておきましょう。
(個人的に体験授業が1回だけで、本当に体験したことになるのかなぁと感じます。)
4.通塾してからの注意点
さて通塾してからの注意点です。
ポイント
・1週間に1度、こちらから塾側に電話orメールを入れて、授業の様子を伺う
・1か月ほどしてからお子様に授業は楽しいか、質問しやすいかを聞く
・講師を変えられることができることを伝え、別の講師を試してみるか聞く
・要望はどんどん伝える
通塾後1カ月は1週間に1回は塾側に電話かメールであれこれ授業の様子を質問しましょう。そこで教室長の対応を測りましょう。
それから、かなり期間が経過してから、「あの先生嫌…」と子供に言われては時間の無駄遣いです。
1か月ほど経過した時に必ずお子様に授業の様子や講師について質問してみましょう。
もし問題があるならすぐに講師について塾に相談しましょう。講師を変える事ができるのは個別塾のメリットであり、当然の権利です。
すぐに対応してもらいましょう。
ただし講師を変えまくっていては授業にも支障をきたすので、なぜその講師が嫌なのか、その理由をしっかりお子様から聞き取るようにしてくださいね!
最後に、保護者様の要望はどんどん伝えましょう。保護者様の要望が明確に分かった方が授業もしやすいものです。
ただ、塾側でも対応できる事に限界があり、無理な事もあるので、理解を示すことも忘れないでいてくれると塾側としても非常に助かります。
まとめ
さていかがでしたでしょうか。
かなりボリュームのある内容になりましたが、最も重要なのは、どういった目的で個別塾を利用するかです。
しっかり優先順位をつけて何を個別塾に求めるのか明確にしてください!
少しでもこの記事がその参考になれば幸いです!